格闘ゲームとキャリア

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【eスポーツ】勝敗予想で賞金⁉新しいeスポーツ大会の仕組みiXA ENGINEとその課題

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2021年1月22日にファミ通.comのニュースに掲載されたこの記事が話題になった。

www.famitsu.com

 

新しいeスポーツ観戦の仕組み“iXA ENGINE”では勝敗予想ゲームで観戦者も賞金が貰えるということばかりが広まった。

そんなこんなで一部の人々からは「ついにゲーミング賭博か」なんて声も。

しかしこの仕組みがそのようなざっくりとした印象論だけで片付けられたら勿体ない。

 

またトークン発行型クラウドファンディングトークン」「ベネフィット」等々、馴染みのないワードも多く理解が難しい印象を持った方もいると思う。

 

今回はこうした仕組みについても分かりやすくお伝えできたらと思っている。

私の認識不足や記事の内容に誤り等があった場合にはお問い合わせまで。

 

iXA ENGINEの全体像

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(iXA ENGINE HPより引用:https://ixaengine.yarukiman.com/

 

まずiXA ENGINEの基本構造から。

構造としては3つの分野に分かれた会社が合同で1つの仕組みを構成していると考えてほしい。

 

①TEAM iXA(チームイクサ):大会主催、運営

→実際の大会主催・運営を行う。プレイヤーはTEAM iXAの大会に参加、上位入賞を目指す。観戦者は試合を観戦し選手を応援する。

➁FiNANCiE(フィナンシェ):トークン発行型クラウドファンディングサービスを提供。主にTEAM iXAの大会主催・運営・賞金のための資金調達の手段になる。

➂Cheered(チアード):勝敗予想ゲームのサービスを提供。LINEのシステムと連携しており、勝敗予想ゲームの結果に応じて賞金を得ることが出来る。

 

それぞれの役割がはっきりと分かれており、3つのサービスが合わさることによって提供されるのが「iXA ENGINE」だ。

 

もっと大雑把にまとめてしまうなら、

・大会運営の「TEAM iXA」

・資金調達の「FiNANCiE」

・観戦をさらに盛り上げる「Cheered」

と言えるだろう。

 

これまで大会と言えばIPホルダー(CAPCOMSNKSEGAといった版権元)主催の大会、第三者の組織が開催する大会などがあった。

※前者はCapcom Cup、後者はEVOなどの大会のイメージ

IPホルダー主催の場合には賞金提供の法的課題があり、EVOなどの第三者による大会はスポンサー集め、運営費の捻出等の資金面での課題があった。

 

今回は第三者による大会運営のため賞金提供については問題ない。

またチアードの勝敗予想ゲームでの賞金も「オープン懸賞」にあたるため法的問題はない。

※こちらは後ほど説明

コロナの影響でますますスポンサーのみに頼っての大会運営は厳しくなってくる中で、資金調達をトークン発行型クラウドファンディングによって賄うという仕組みが大会運営に組み込まれたのは画期的だ。

 

もしこのiXA ENGINEがさらに発展・成功した場合、他の大会についてもトークン発行型のクラウドファンディングの導入が進んでくるかもしれない。

そうなればプレイヤー、観戦者にとってより良い大会運営をする組織が残り、結果的にゲームを利用した大会全体の価値向上が達成されるのではないだろうか。

 

 

iXA ENGINEの仕組みの一例 

 

次により具体的なイメージを持ってもらうために、

もし仮にあなたが大会主催をしようとする運営だった場合を想定してほしい。

 

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(あなた)

格闘ゲームの大会を開催したいなあ!…でも賞金や運営費用はどう集めたらいいんだろう?」

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(FiNANCiE)

「うちのサービスを使えば、大会を応援してくれる人達から支援を受けられるよ!」

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(あなた)

「これで大会が開けるぞ!でも、もっと多くの人に大会を見てもらいたいなあ…」

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(Cheered)

「うちの勝敗予想ゲーム使えば、観る人もさらに盛り上がれるよ!当然参加は無料!」

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(あなた)

「これで今までよりも多くの人の関心を集められる!」

「大会成功!」

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あなたが大会を運営しようという立場になれば、FiNANCiEやCheeredのサービスが大会を開催するにあたって心強い味方であることが分かるのではないか。

またこうした仕組みは何も大会運営のためだけにとどまらず、

プレイヤーや観戦者、さらにはクラウドファンディングの支援者にとってもこれまで以上の恩恵をもたらす。

 

・プレイヤーにとっては賞金額が増えることが期待できる。

⇒大会参加者の増加に繋がる

・観戦者は賞金付きの予想ゲームで盛り上がれる。

⇒観戦者の増加に繋がる

クラウドファンディング支援者は購入したトークンの価値上昇で利益が期待できる。

⇒大会への支援をする人が増え、大会規模の拡大に繋がる

 

 

「勝敗予想ゲームで賞金を手にできる!」

という文句が独り歩きしてしまった感があったが、

こうした大会の開催に関わる全体の利益になる仕組みだということの方が浸透して欲しいところだ。

 

 

FiNANCiE(トークン発行型クラウドファンディング)って何?

 

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(iXA ENGINE HPより引用:https://ixaengine.yarukiman.com/

 

まずはクラウドファンディングというものをざっくりと理解する必要がある。

上の図ではFiNANCiEのサービスを通して「支援者」はトークンを購入し、トークン・特典を受け取る。「TEAM iXA」はトークンの発行、特典の提供をすることで、支援金を受け取ることとなっている。

 

パット見ただけでは構造を理解するのが難しいかもしれない。

これは「トークン」、「特典」というものが何なのかイメージしにくいことが原因な気がする。

そのためもう少し具体的な説明にしたい。

 

まずは一般的な「クラウドファンディング」と今回のFiNANCiEの「トークン発行型クラウドファンディング」の違いから見ていこう。

 

<一般的なクラウドファンディング

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こちらが一般的なクラウドファンディングの構造。

※厳密には購入型クラウドファンディング

 

クラウドファンディング事業者(CAMPFIRE,READYFOR等)は何かしらのプロジェクトを持つ企画者(オーナー)とそのプロジェクトを支援したい人(サポーター)をマッチングさせるサービスを行っている。

各オーナーは支援を募るだけでなく、支援金の額によって支援者への“リターン”をそれぞれ設定する。

例えば自己ブランドのTシャツや限定グッズ、限定イベントへの参加権、はたまたアプリであればサービスへの早期アクセスだったりなどリターンは幅広い。

 

ちなみにリターンの中にはこんなものもあったりする…

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(シルクハット『木の時計台を作りたい』 よりhttps://silkhat.yoshimoto.co.jp/projects/794/patron

 

まあこれは正直極端な例だが、リターン自体は割と企画者が自由に設定できるものと思っていただければそれで良い。

クラウドファンディング事業者はこのようにして集まった金額の一部を手数料として受け取ることで事業を継続的展開している。

 

次にFiNANCiEの構造はどのようなものなのか見ていこう。

 

<FiNANCiE(トークン発行型クラウドファンディング)>

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こうみると基本的な構造は変わらないし、リターンを受け取ることも普通のクラウドファンディングと同じだ。

ただしトークン”という見慣れないものを何やら取引しているのに気づくだろう。

トークンはオーナーが独自に発行できるポイントのようなものをイメージして貰えると分かりやすい。(Tポイントや楽天ポイントのような)

※とりあえずトークン→ポイントと頭の中で置き換えてもかまわない(厳密には違うけど)

 

トークン発行型クラウドファンディングではオーナーはまずトークンを発行し資金を集める。

支援者がそのトークンを購入する場合にはオーナーが用意する複数のリターンの中から選ぶことになる。

リターン自体は普通のクラウドファンディングと同様にかなり自由に設定できるので、ここは特にオーナー毎の個性が出る部分だろう。

流石にあの「〇〇を休ませる権」みたいなのはないと思うが…

 

iXA CUP プロジェクトではiXAトークンに加え、スポンサーカードや限定Tシャツ、パーカーがセットで販売されている。

iXA CUP プロジェクトの詳細についてはこちらから ↓↓

financie.jp

 

 

また先ほども述べたようにリターンは物理的なモノだけではなく、支援者のみに与えらる特別な“権利”が特典(ベネフィット)として提供されたりもする。

特にFiNANCiEを利用する組織として最も話題となったのはJリーグクラブの湘南ベルマーレだろう。

www.bellmare.co.jp

特徴的なのはFiNANCiEを利用して支援を募り、支援者にはサポーター投票企画への参加権スペシャルデーへの参加権などを提供するとしていること。

2021年2月5日の時点では支援総額が350万円を突破しており今後さらなる伸びも期待できそうだ。

 

 

さて、次にトークンへの理解を進めていこう。

FiNANCiEではプロジェクト開始時に200万トークンが発行されることになっているが、トークンの価格は集まった支援金をこの初回発行数200万で割って算出される。


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↑実際のFiNANCiEアプリ上の画面

 

また各支援者へのトークンは、集まった支援金額に対する各自の購入金額の割合に応じて配分される。

 

ちょっと文字にすると小難しいので例を出してみる。

以下はFiNANCiE公式のヘルプから引用させて頂いた。

 

例)

トークン全体:200万トーク

集まった支援金:300万円

あなたがトークン購入に充てた金額:3万円

の場合、

 

(1トークンあたりの価格の算出)

300万円÷200万トークン=1.5円/1トークンあたり

 

(あなたに配分されるトークンの量)

3万/300万=1%

200万枚の1%=2万トークンの配分となる

 

(「FiNANCiEガイド・ヘルプ>よくある質問>トークンの価格はどうやって決まるのでしょうか」より引用)

 

まあ要するに、

「購入した金額に応じたトークン(独自のポイントのようなもの)が貰える」

と考えれば問題ない。

 

ただしトークン発行型クラウドファンディングの特徴はこれだけではない。

 

それは、

トークンを売却することが出来る」

ということ。

 

例えばiXAプロジェクトが大きく成功して注目が集まれば、結果的にトークンを購入して支援したい人が増える。

そうしてトークンの価値が上がった場合、初期にトークンを買っていた人たちはそのトークンを売却することで利益を得られるのだ。

 

先ほどの例に当てはめてみよう。

 

 例)

1.5円/1トークンの価格の時に、3万円で2万トークンを購入

(一か月後)eスポーツ大会成功、大いに盛り上がり注目度が増す

3円/1トークンの価格に上昇(二倍!)

保有している2万トークンを売却し、6万円(利益3万)を受け取れる

※実際は売却手数料等がある

 

これは分かりやすくトークン価値が2倍となる想定にしたが、実際はそこまでの急騰はないと思う。

しかも実際には売却時に手数料が発生するため、単純に利益をそのまま貰えるような仕組みにはなっていない。なのでこれはあくまで例え話として捉えてほしい。

※後になって「全然価値上がらないじゃん、騙された!」とか言わないで…

 

ちなみにこのトークン売買で利益を上げすぎると、税金面での申告が必要になる場合もあるので、これからFiNANCiEを利用しようと考えている人はその点注意してほしい。

 

本来のクラウドファンディングではリターンの享受は一時的なものだ。

しかしトークン価格の上昇という投資的な側面も持っていることで、支援を継続することに大きなメリットが生まれ、より安定的で広い間口からの支援を期待することが出来る。

これこそがトークン発行型クラウドファンディングの大きな特徴である。

 

 

Cheered(勝敗予想ゲーム)って大丈夫なの?

 

おそらくこの話題で一番の注目ポイントなのがこの

「勝敗予想ゲームで賞金が貰える」

という部分だと思う。

 

賛否両論あったがTwitterでは、

「eスポーツ賭博」

「闇が深そう…」

「観戦者が賞金を貰えるって法律的に問題ないの? 」

といったような反応が目についた。

 

ここでは「賭博なのか」についての疑問と、なお残る課題についてまとめていく。

 

<勝敗予想ゲームの仕組み>

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 (iXA ENGINE HPより引用:https://ixaengine.yarukiman.com/

 

法的な課題をクリアしていることを理解するために重要なポイントが、

“参加無料”“誰でも参加可能(条件なし)”

という部分。

※条件が無いといってもLINEのシステムを利用する以上、LINEのアカウントは必要になる

 

この運用形式は景品表示法の規制対象外の「オープン懸賞」というものにあたる。

 

・オープン懸賞(参考)

景品表示法上、商品・サービスの利用者や、来店者を対象として金品等を提供する場合は、「取引に付随」して提供するものとみなされ、景品規制の適用対象となります。

 

他方、新聞、テレビ、雑誌、ウェブサイト等で企画内容を広く告知し、商品・サービスの購入や来店を条件とせず、郵便はがきファクシミリ、ウェブサイト、電子メール等で申し込むことができ、抽選で金品等が提供される企画には、景品規制は適用されません。このような企画は、一般に「オープン懸賞」と呼ばれています。

 

オープン懸賞で提供できる金品等の最高額は、従来、1000万円とされていましたが、平成18年4月に規制が撤廃され、現在では、提供できる金品等に具体的な上限額の定めはありません。

 

消費者庁「景品規制の概要」オープン懸賞(参考)より引用https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/

 

参加条件がなく、参加費用も徴収していないため「取引付随性」がないという扱いとなり、こちらは規制の対象外となる。

例えばTVのdボタンを押してちょっとしたゲームの結果で商品があたるキャンペーンや、Webサイト上でのミニゲームを参加した人から抽選で賞品が当たるといったキャンペーンなどがオープン懸賞にあたる。

※参考としてDyDo「おいしい水 ミウ」のHP内にあるミニゲームを紹介しておく。

www.dydo.co.jp

 

 

要するにCheered(勝敗予想ゲーム)は顧客獲得のための宣伝・PRをする役割を担っていると言える。

ちなみに競馬や競輪のように「負けが続いて、取り戻そうと躍起になる」なんて事にはならない。そもそも参加無料なので「失うものがない」のだから。

だからこそ参加のハードルが低く、幅広い層に対してのeスポーツのPRになる。

 

ちょっとしたゲーム感覚で選手を応援出来て、かつ自分も賞金が貰えるかもしれないと思えば、これまでよりもさらにエキサイティングな試合観戦になるだろう。この仕組みが成功すれば新規の観戦者が増えるだけでなく、競馬のようにeスポーツ予想屋なるものが現れてくるかもしれない。

このiXA ENGINEによってeスポーツの観戦スタイルが大きく転換したとしたら、今年こそ真のeスポーツ元年と言えるのではないか。(何回目のeスポーツ元年だよ…)

 

 

…とここまで書いてきたが、

この仕組みにも当然課題が残されている。

 

<課題>

 

一つは八百長の問題。

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現実問題、eスポーツプレイヤーの中にはそれほど稼ぎの多くない者もいるのが事実だ。

 

そうした状況下では八百長の誘惑に負けてしまうプレイヤーが出てきてしまってもおかしくはない。実際のところ参加無料ではあるので観戦者が損することはないのだが、やはり一度でも発覚してしまうと業界全体のイメージが悪くなってしまう。

 

事実競馬界では厳しい八百長防止策が採られており、競争前には調整ルームと呼ばれる騎手専用施設に事実上の隔離を強いられる。賭博ではないので流石にここまでの対応がされることはないだろうが、勝敗予想ゲームとなる以上は最低限の対策は必要になる。

 

八百長防止のための工夫はいくらでもできると思うので、今後の詳細発表に注目したいところだ。

予想ゲームの順位付けをトーナメント全体での予想結果にすれば、個人の八百長の影響力を相当減らすことが出来るし、いくらでも運用で対策可能な範囲だと思う。

 

 

 

二つ目は選手への誹謗中傷の対策

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いくら参加が無料の勝敗予想ゲームとはいえ、つい熱くなって選手へ過激な言動を行う者も少なからず出てくるだろう。そのような事態が起きた場合に、選手に対してどれだけのケア、そして誹謗中傷の対策を運営側が出来るのか。

継続的な大会開催のためにはとても重要なことであるのは言うまでもない。

 

昨今インターネット上での誹謗中傷問題は深刻さを増してきている。

それらが原因で自殺という手段を選んでしまう者がいることは無視できない。

 

そもそもこの勝敗予想ゲームは「選手の勝敗結果」を使ったPRキャンペーンだ。

選手の勝敗結果を顧客誘引の手段に用いている以上、

「選手への誹謗中傷に対する責任がない」とするのは道理として通らない気がするのだ。

だからこそ今後選手への誹謗中傷に対してどのような対策が取られるかについても注目していきたいと思う。

 

 

終わりに

まだまだ始まったばかりのiXA CUPプロジェクト。

だからこそ、この0→1の動きを傍から見ているのは本当に面白いし期待もしている。

 

ちなみに次の記事では実際にトークンを買ってみるのを記事に出来たらと考えている。

※実はiXA限定のパーカーが欲しかったりする

 

予定されている第一回目の大会は2021年3月13日のKING of GIANT Festival 2nd 決勝戦

使用タイトルは「BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE」

 

BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE Special Edition - PS4

BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE Special Edition - PS4

  • 発売日: 2019/11/21
  • メディア: Video Game
 

 

 

詳細はこちらのリンクから ↓

『iXA CUP プロジェクト』、第1弾を「BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE」のメーカー公認大会「KING of GIANT Festival 2nd」にて実施決定!|株式会社フィナンシェのプレスリリース